タンザナイトTOP>No.12:ダルエスサラーム

ダルエスサラーム

 ダルエスサラーム、タンザニアで一番大きな都市です。でもふと気がつくと、この町についてはまだ一度も書いたことがありませんでした。今回はちょっと紙面を割いて紹介してみましょう。

 タンザニアの首都はどこでしょうか?という質問に、多くの人はダルエスサラーム、と答えると思います(いや、多くの人は「知らない」と答えるのかな?)。日本大使館があるのもダルエスサラーム、そして僕らが配属されている天然資源省の本部があるのもダルエスサラームです。

 でも法律上の本当の首都はドドマという、内陸の町です。どうもタンザニア政府は、ブラジリアのような感じで、内陸の発展を狙って人工的な都市を作ろうとしたようなのですが、費用ばかりかかってあまり成功しているとは思えません。既に大統領府や国会はドドマに移っていますが、ダルエスサラームにもまだ大統領官邸はあり、事実上の首都機能はダルエスサラームにあると言ってよいと思います。

 ダルエスサラームの語源はアラビア語で「平和な天国」といったような意味だそうです。都市としての歴史はそれほど古くなく、ザンジバルにいたアラブ系のサルタンが、19世紀中頃に、鄙びた漁村しかなかった入り江を、新たな港として開発したことに始まるようです。その後植民地化したドイツがここを使い、発展してきたようです。

 モシからダルエスサラームに出る時は、多くの場合車を使います。距離は約600kmありますから、かなりのロング・ドライブです。この間、高速道路でもないのに信号機は一つもありません。と言ってもモシには信号機など無いし、そう言えばダルエスサラーム以外では信号機を見たことがありません

 途中小さな町がある他は、サバンナを抜け、サイザルのプランテーションを抜けと、退屈極まりないドライブです。それでもダルエスサラームが近づくと、交通量が増え、道の両側が活気付いてきます。モシの田舎に住む僕らにとっては、その活気が眩しく感じられます。そして600km走った後、ダルエスサラームの町の入り口の信号機を見る時が、おのぼりさんの醍醐味を感じる一瞬です。

 さてダルエスサラームには何があるのか、と言った所で観光名所などはそれほどありません。しいて言えば博物館、ここにはタンザニアで発掘された旧人類の化石などが展示してあります。他の展示は、まあ、正直な所、日本の中学校の標本室か、文化祭の社会科クラブの展示か、と言った程度です。

 他にはタンザニア各地の民家を集め、各民族の踊りを見せてくれるフォーク・ヴィレッジがあります。それなりに素朴でいいのですが、「各民族の踊り」を踊る人達が全部同じメンバーで、それぞれの踊りのどこがどう違うのやらどうも良くわかりませんでした。

オイスターベイ 僕らがダルエスサラームへ出た時の楽しみは、やはり海と食とにあります。霊峰キリマンジャロは多くの日本人にとっても憧れですが、やはり日本人、時には海を見たくなります。

 ダルエスサラームの海は下水などで汚染されていて泳げず、また海岸も治安の問題があって、のんびり散歩する訳には行きません。でも海辺のホテルのレストランで、ヤシの木と海を眺めながら食事が取れるオイスター・ベイは、僕らにとっては湘南海岸と言ったところでしょうか。

 モシでレストランらしいレストランと言えば、「中華三昧」という名のフランス料理店(ウソ、もちろん中華料理店です)が一軒あるだけです。昔は中国人の料理長がいたらしいのですが、今は経営も調理人もタンザニア人で、火を通し過ぎの中華料理を食べさせてくれます(なにせタンザニアの伝統的調理方法は煮込みです)。でも普段はこれでもとってもおいしく感じています。(この記事を書いた後、インド料理店が一軒できました。)

 この状況から比べるとダルエスサラームには、なんとスティームボードを出す中華料理店があるし、その他にもイタリアン、インディアン、等など数多くあります。カニの爪などのシーフードを、建物の屋上でビュッフェ・スタイルで食べさせてくれるしゃれた店もあります。

 それに加えてシェラトン・ホテルです。ここで食事をすると、一回で庶民の月収近く取らることもありますが、年に何回かしか出ないお上りさんには欠かせない場所です。僕はここには泊まらず安ホテルに行きますが、日本人の感覚で見てこぎれいと言えるのはシェラトンがほとんど唯一です。また日本料理店は今までありませんでしたが、近々オープンすると聞きました。

 ダルエスサラームで忘れてはいけない(もちろん山暮らしの僕らにとって、ですが)は、フィッシュ・マーケットです。大きなトロール船の基地になっているわけではなく、小船に乗った地元の漁師達が、その朝獲れた新鮮な魚介類を陸揚げしています。船から下ろしたばかりの魚を競りで売っていて、特別な資格無しに誰でも参加できます。ただ全部スワヒリ語で行われるので、スワヒリ語に堪能な人と一緒に行かないと手も足も出ません

 ここではマグロも手に入りますし、新鮮な大きな伊勢エビもあります。イカも一ぱいが1kg以上あるような、肉厚のものが手に入ります。一度ここで仕入れた魚をモシに持ち帰り、みんなでさしみパーティーをしましたが、1m近いマグロ、50cm位の伊勢エビの他に、サワラやタイと、日本でも滅多にできない贅沢をしました。もちろん1mもあるマグロなど簡単に食べきれる訳もなく、今でも切り身が冷凍庫にしまってあります。

 たまにダルエスサラームで手に入るのが、なんと僕の大好物、ドリアン(右の写真)です。ザンジバル島で少しだけ作っているそうで、普通の市場ではなく、ダルエスサラームの下町の一角、道路際に出る露天商が売っています。季節の物でいつもあるわけではないので、一度見つけた時にありったけ買い占めたことがあります。

 買い占める、と言っても10個くらい、金額で2千円程度でしょうか。でもザンジバル産のドリアンは、タイなどで作っているものと違い品種改良がされておらず、実は小さく、食べる所もほんのちょっぴりしかありません。その上この時買い占めた物は、ほとんど中に黴が生えていて、悔しい思いをしました。

Tingatinga Shops ダルエスサラームへ行く時の僕の楽しみは、時間を見つけてティンガティンガを探すことです。無名画家や画家志望の人達が集まって作業をしている場所があり、そこへ行って掘り出し物を物色します。大部分は下手糞なものなのですが、その中に時々キラッ!と光っている物があります。以前にお見せしたマサイ族を描いた作品などはその一枚です。

 ダルエスサラーム、熱帯の湿った暑い空気と喧騒、海のにおい。