侵入者たち
日本に住んでいても黙って家に入り込んでくる連中がいます。一番の嫌われものはゴキブリ、そしてネズミでしょうか。今まで住んでいた所では何と言っても森林地帯にいたホンジュラスの時が一番凄く、サソリやムカデまで寝室に出た、なんて書くと「絶対そんな所には住めない!」とか「野田さんのところへお嫁に行くのはやめよう」とか思う人がいることでしょう。
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| コオロギを食べるヤモリ |
ここタンザニアのモシは一応は大きな町ですが、僕の家の周りには畑も多く、また木も比較的多く植えられており、庭にはいろいろな鳥が来ますし、夜になると時々ハリネズミを見かけることもあります。でも家の中にまで入ってくるのはシャイなヤモリたちのほかはもっぱら虫たちです。
愛敬があるのは夜、光に惹かれて時々入ってくるカマキリとかコオロギでしょうか。あまり歓迎できない連中はやはりゴキブリが筆頭で、次は毎晩戦いを強いられている蚊でしょうか。なにしろ僕の住む家には網戸がないのです。幸いなことにマラリアを媒介する蚊はいないようなので、そのままにしています。ノミ、シラミ、南京虫のたぐいは幸いにして家の中ではまだお目にかかっていません。
ありんこは常に2種類が家の中を這い回っています。たちの悪いのはちびの方で、砂糖の壜を見つけたり、コーヒーメーカーの中にまで入り込んだりします。でかい方は日本の山に行くと時々いる黒い大きな蟻ぐらいのサイズですが、一体何を食べているのか、うろうろしているだけで、時々踏み潰されてプチッなんていっている哀れな奴です。
もう一つ忘れていけない虫がコクゾウムシです。日本では消毒が行き届いてしまっているせいか、あまり目にする機会もなくなったようですが、タンザニアのコメは安全?なためかすぐ虫がつきます。虫がわいたコメはメイドのフェリスタおばさんの忠告に従い、冷蔵庫に入れています。こうすると虫が死ぬわけです。入りきらないコメ袋にはニンニクが入れてあります。果たして効果はあるのでしょうか。
またコクゾウムシがつくのはコメだけではありません。一ヶ月間の一時帰国から帰って来たらスパゲティ一袋は完全にぼろぼろにされていました。小麦粉にもつくし、ビスケットにもつきます。またアーモンドの実まで齧っていました。いったん食べ物がある所に入り込むと、そこでどんどん繁殖するので始末に終えません。だから今は麺類なども冷蔵庫に入れ、小麦粉は密封できるプラスチック容器に入れてあります。
今年の6月頃でしたか毎晩深夜の訪問者がありました。まずドン、と屋根の上に降りたつ音がします。そしてすぐに屋根裏に入り込むのか、天井裏を走り回るのようなのです。空から来るのでネズミではありえません。かなり大きな足音を出すのである程度の大きさの鳥か動物だと思うのですが、不思議なことに昼間どこを探して見ても、ある程度の大きさの動物が天井裏へ侵入できるような隙間は屋根にありません。そのうち来なくなってしまいましたが、いまだに正体は不明です。見極められたらそれだけを一本のねたにして書こうと思っていたのに。
この夜の訪問者の正体は突き止められませんでしたが、先日それでもこの記事を書かせる気を起こさせた極めつけの侵入者が現れました。最初床に茶色いものがあったので「あれ?開いてた窓から枯れ葉が入って来たかな?」と思いました。
何度かそばを通っている間にふと細長いものが何本か目に付きました。「あれ葉柄にしては変だな?」と思って顔を近づけて良く見ると、胴体だけで6cmほど、足までいれると手のひらよりはちょっと小さいくらいのタランチュラ。ちょうど愛読しているNational Geographic誌の1996年9月号にタランチュラの記事が出ていて「へえ、南米だけでなく世界中にいるんだ」と新たな知識を仕入れたばかりのことでした。
タランチュラも寝室に入って来たことこそありませんが、中米にいた時にはかなりおなじみだったので、この時もあわてずちりとりを持って来てその中に追い込み、庭に放り出しました。毛むくじゃらで一見気味が悪いですが、おとなしく、意外に扱いは楽なのです。ちりとりに乗せる時もまず噛まれることはないだろうと思っていました。
「タランチュラじゃ、やっぱりお嫁に行かない」って?大丈夫だってば!
(注:筆者はその後2000年にめでたく結婚しました。妻がちゃんと既婚であることを明記しろ、と言っております。)


