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貧困調査

 11月に僕らのプロジェクトを対象に貧困評価調査が行われました。なじみがないかも知れませんが、人々は自分たちの貧困をどのように捉えているか、そしてプロジェクトはそれに対してどのようなアプローチを取っているか、の調査です。

 まず今回の調査は、JICAとUNDPの合同で行われています。今回は最初、ということで、JICAのプロジェクトを評価し、評価チームもJICA側が中心になって形成しているところへ、UNDPからも人を派遣する、という形で行われました。人々の貧困に関する定義を洗い出し、JICAあるいはUNDPのプロジェクトが、その点でどのようなインパクトを出しているか、いないか、という点を評価します。「なんで僕らの林業プロジェクトが対象なの?」「この間はジェンダーの調査を受けたばかりだよ。」と、いろいろ言いたいこともあるのですが、とりあえず調査そのものは意欲的であり、面白いので良しです。

 しかし、今年は会計検査も入りましたし、JICAの各部署や、日本政府の他の部局がばらばらにうちのプロジェクトをターゲットにするので、僕らよりも調査される村人の方が「またかよー」状態になっている気もします。プロジェクトでも仕事の上でいろいろな調査をしていますしね。

 調査対象は、マサイの村メセラニと、パレの村キリンジコ・チニを選定しました。この二つを選んだ理由は、僕らのプロジェクトの対象地域の中では、最も生活条件が厳しいところだからです。今日までに行われたのは 2. の一時調査の方法のテストですが、これはメセラニに隣接するコンボ村で行われ、人種構成はマサイが多数派、パレが少数混じっている村です。

 一次調査の内容だけ紹介しますが、その方法は、以下のようになっています。

1. ジェンダーごとのフォーカス・グループ・ミーティング
1.1 村レベルでの貧困
1.2 家庭レベルでの貧困
1.3 個人レベルでの貧困
2. ジェンダーごとのスコアリング
3. 両性の結果発表

 ここで貧困をレベルに分けたのは、共通の問題を先に出してもらって、個人レベルの問題を特定できるのでは、という考えからでしたが、どうもあまり村レベルでの貧困、という意味がぴんと来ず、個人レベルでの貧困で、つまり自分自身がどう感じているか、というところで出されたことが共通のことである場合が多かった、という印象です。

 そして、「貧しい村はどのような村ですか?貧しい人はどのような人ですか?」と、「あなたはどうしたら豊かになりますか?」という一人称での答をしなくて良いような聞き方をしたのですが、結局出てきたのは「自分はこれがないから困っている」ということでした。問題が多すぎ、生活が厳しすぎて、客観視なんかしていられないんでしょうね。

 男性グループには会場になった小学校の先生が混じったのですが、これは失敗でした。理屈っぽいことばかり主張するし、スコアリングでは、教育に全票(一人10票)を投じてしまいましたから、相当バイアスを生じることになったと思います。いずれにしろ男性側の意見は、項目数が少なく、かつ抽象的になりがちな傾向がありました。

 対する女性は、問題が具体的な表現を取りました。数も多いです。そして男性では見られなかった社会の問題が出てきました。「女性の自由」と「計画出産」の二つがそれです。

 女性の自由、というのは、最初は女性に財産を自由に処分する権利がない、などという意味で出てきました。最初の話し合いでは計画出産もかなり声があったのですが、ランキングをして見ると、女性の自由の半分程度の票しか入りません。そこでこの点について質問をしてみました。

 するとわかったのは、計画出産はセンシティブな問題で、女性はそうしたいのだが男性が許さない。この点に関しても女性だけで決めることはできないので、計画出産の票は少ない。むしろこれを実現するためには女性の自由が前提になるので、計画出産ではなく、女性の自由に票を入れた、ということでした。

 また話し合いでは出ていた農耕が、一票も得られなかったのでなぜか?と聞いてみると、農耕は水がなくてはできない。また水があれば木を植えて、気候を変えることができる。それがなくてはここでは農耕はできない、という答でした。

 水はトップ・プライオリティーとして挙げられており、そのため水を前提とする農耕には票を入れなかったのだそうです。木に関するコメントはここでしか出ておらず、はて?この状況で林業プロジェクトの評価にどうつなげるのだろう?というのは大きな疑問ですが、それはそれ。

 この二つを見て見ると、女性たちが非常に論理的に、何をするには何が前提であるか、を良く考えていることが伺えます。

 またスコアリングは、今回は一人一人別々に、他の人の投票結果が見えないようにして行いました。これは個人による差がどの程度あるかを見るためです。世界的な貧困指標を作る、ではなく、非常にローカルな、住民それぞれが考える貧困状態を知ろうとしていることがわかっていただけると思います。

 最後に男女一緒になってそれぞれの結果を発表しましたが、案の定男性から「女性の自由とはどういう意味か?」という質問が出ました。これにマサイ語とスワヒリ語の通訳を務めてくれた村の女性がうまく答え、女性たちの大拍手が起こりました。普段なかなか男性たちに対して言いたいことが言えない女性たちが、外部者の存在を借りて発言できる機会だったのかもしれません。男性たちは苦笑していましたが、それほど怒った様子もなく、ここでも次第に時代は変わりつつあるのでしょう。